植生史研究 第33巻第2号(2025年9月発行)
[巻頭写真]
韓国におけるカクレミノの利用
小林和貴,p. 41-42
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[原著]
和歌山県生石高原における植生の歴史と火入れの履歴 ―累積性土壌中の植物珪酸体と微粒炭分析を用いて―
井原佑弥・林 尚輝・井上 淳,p. 43-50
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和歌山県生おいし石高原のススキ草原において,累積性土壌中の植物珪酸体と微粒炭の分析,放射性炭素年代測定を行い,約2000 年前頃から現在までの植生変遷と火の歴史について明らかにした。2000 年前から900 年前頃の土壌層にはススキ属やメダケ属由来の珪酸体が見られ,樹木起源の珪酸体が上位の層より多産していた。900 年前から400 年前頃の土壌層ではススキ属やメダケ属を含むイネ科植物由来の珪酸体が増加とともに多産し,400 年前頃以降の土壌層では主にススキ属に由来する珪酸体が多産した。微粒炭は表層付近でのみ高い含有量が認められた。以上のことから,本調査地では900 年前頃までススキ属やメダケ属を伴う疎林環境にあり,900 ~ 400 年前頃にかけて草原環境へ推移し400 年前頃から現在のようなススキ草原が広がっていたと推察される。また,微粒炭量の変化,微粒炭の放射年代測定値と調査地の火入れの記録から,生石高原での継続的な火入れは最近の約20 年間に限定され(記録では火入れは西暦2003 年からとされる),それ以前には継続した火入れは行われず,主に刈り取りにより草原が維持されていたことが明らかとなった。こうした刈り取りのみによって草原が成立・維持された背景には,近代までは一定の草材の利用とともに,同地域特有の地質により土壌が発達しにくく樹木の生育に適さず,草地が発達しやすい環境にあったためと考えられる。
[短報]
縄製作実験による縄文時代の撚り縄素材選択の解明
能城修一・小林和貴・佐々木由香・鈴木三男・菅野紀子,p. 51-56
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[短報]
金漆採取の候補植物であるウコギ科3 種の樹皮組織の構造
小林和貴・能城修一・小倉慈司,p. 57-63
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[雑録]
報告-20th Conference of the International Workgroup for Palaeoethnobotany(IWGP2025)参加記
平岡 和,p.64-66
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[事務局報告] p.67-69
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