【14巻1号】2006

植生史研究 第14巻第1号(2006年1月発行)

[巻頭写真]
千葉県館山市茂名地区「茂名の里芋祭り」
辻圭子, PDF

[原著]
宮崎県南部の照葉樹林における樹種構成と表層土壌中の樹木起源珪酸体との関係
河野樹一郎・河野耕三・宇田津徹朗・藤原宏志, p3-14, PDF

宮崎県南部に成立する照葉樹林を対象として,植生調査と森林内の表層土壌中の植物珪酸体分析を行い,樹木起源珪酸体の組成と樹種構成との関係について検討 した。植物珪酸体分析はアカガシ亜属型,シイ属型,イスノキ属型,クスノキ科型,マツ科型,およびアワブキ科型の6つの珪酸体を対象とした。その結果,ア カガシ亜属型やシイ属型珪酸体の出現状況は,それぞれの給源となる樹種の優占程度を反映しており,植物珪酸体分析を用いてカシ林やシイ林といった照葉樹林 の群落型を区別できることが示唆された。クスノキ科型やアワブキ科型珪酸体の出現状況には,バリバリノキやヤマビワといった各給源樹種の分布状況との対応 関係が見られた。マツ科型珪酸体は,調査地またはその近辺にアカマツなどのマツ科樹木が生育する,二次林的な照葉樹林内から検出される傾向が見られた。イ スノキ属型の珪酸体は,給源となるイスノキが生育していない林分も含めて,すべてのプロットから高率に検出された。イスノキ属型珪酸体は,その他の樹木起 源珪酸体と比べるとかなり多量に検出される傾向が見られたことから,イスノキ属型珪酸体を用いて過去の植生復元を行う際には定量的にかなり過大に評価され る可能性が示唆された。

ウルシ花粉の同定と青森県における縄文時代前期頃の産状
吉川昌伸, p15-27, PDF

木材化石および種実化石の研究から縄文時代前期以降に日本にウルシが生育していたことが明らかにされてきた。しかし,木材や果実は利用のために遺跡 内に搬入される可能性があるため,遺跡周辺でのウルシの生育については明らかではない。ウルシ花粉はウルシ属の他種と彫紋にわずかに違いがあることが記載 されてきたが,識別の根拠は明らかにされていなかった。そこで,日本産ウルシ属6種の花粉について光学顕微鏡を用いた花粉形態の詳細な観察と彫紋の画像解 析を行った結果,ウルシの彫紋がほぼ類似した形状と大きさの網目から構成されていることから,同属の他種と識別できることが明らかとなった。この結果に基 づき,青森県の縄文時代前期頃の3遺跡の堆積物でウルシ属花粉を再検討した結果,ウルシは放射性炭素年代で約5600年前のクリ林の出現期以降の堆積物か ら産出し,約4500年前のクリが衰退し,トチノキ林が拡大する時期以降の堆積物では確認されないことが明らかとなった。

[短報]
江戸の墓から出土したコショウ
鈴木伸哉・南木睦彦, PDF

[雑録]
報告 -第23回日本植生史学会談話会
吉田明弘, PDF

報告 -第23回日本植生史談話会報告
貞方昇, PDF

[書評]
花の大百科事典
鈴木三男, PDF

環境考古学への招待-発掘からわかる食・トイレ・戦争-
鈴木三男, PDF

ヒマラヤ植物大図鑑
鈴木三男, PDF

[事務局報告]
PDF