【13巻2号】2005

植生史研究 第13巻第2号(2005年3月発行)

[巻頭写真]
北海道における白亜紀の木材化石の産地および産状
高橋賢一, PDF

[原著]
滋賀県曽根沼堆積物の微粒炭分析による約17,000年以降の火事の歴史

井上淳・高原光・千々和一豊・吉川周作, p47-54, PDF

森林火災などの火事の歴史を明らかにする目的で,堆積物中の微粒炭の研究が進められている。本研究では,滋賀県曽根沼堆積物中の小微粒炭 (microscopic charcoal particles)と大微粒炭(macroscopic charcoal particles)の含有量分析を行い,17,000年前以降の火事の歴史を解明した。分析の結果,小微粒炭と大微粒炭の含有量変化の傾向は異なってい た。小微粒炭は,深度7.6-6.8 m(13,000-10,000年前に相当)で連続して多産した。大微粒炭は,深度7.0 mより上位(約10,000年前以降)で,しばしば突発的に多くなる傾向が認められた。以上のことから,13,000年前から10,000年前には,広い 範囲で頻繁に火事が起こったのに対し,近隣の火事は,10,000年前以降に少なくとも数度,起こったものと考えられた。これまでの微粒炭研究からも,更 新世末期から完新世初頭に火事が頻繁に起こったことが指摘されており,同時期に少なくとも近畿地方において火事が広域に起こっていたと考えられる。さら に,微粒炭の反射率測定を行った。その結果,深度300 cm(約4000年前)の微粒炭は,比較的高温(約500°C)で生成されたと考えられ,これらは樹木の燃焼によって生成したものと推測された。

[総説]
北海道産白亜紀の双子葉類木材化石および材形質の初期進化

高橋賢一・鈴木三男, p55-77, PDF

北海道に分布する蝦夷層群の下部白亜系Albianから上部白亜系Santonianの層準から144点の双子葉類の木材化石が採集され,材形質を検討し た結果,10属14種が認められた。14種すべてが新種であり,10属のうちCastanoradix, Frutecoxylon, Nishidaxylon, Sabiaceoxylonの4属が新属であった。残り6属のうちIcacinoxylon, Magnoliaceoxylon, Paraphyllanthoxylon, Plataninium, Ulminiumの5属は,これまでに白亜系および第三系からの産出が既に知られていたもので,一方,Hamamelidoxylonは過去に第三系から のみ産出していたものであった。各地質年代ごとの産出は,Albianから1種,Cenomanianから4属4種,Turonianから8属10 種,Coniacianから6属7種,Santonianから7属8種であった。最も古い層準であるAlbianから産出した唯一の種 Icacinoxylon kokubuniiの2標本は,双子葉類の木材化石では日本最古のものである。世界的に見ても,蝦夷層群に対比される年代の双子葉類の木材化石を用いた系 統立った研究は過去に行われていなかったため,本研究により,白亜紀中期における材構造の多様性が初めて明らかとなり,初期の材進化についての検証がなさ れた。

[解説]
ポーランド科学アカデミー・シャフェル植物学研究所の植物化石標本コレクション

百原新, PDF

[書評]
考古学者のためのドングリ識別法
新山雅広・佐々木由香, PDF

[事務局報告]
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