奨励賞は公募期間中に推薦のあった,2名(伊藤彩乃会員・真邉 彩会員)を審査対象とした。日本植生史学会表彰規程に則って,第14回奨励賞審査委員会(江口誠一委員長,那須浩郎委員,佐々木由香委員)を設置し,厳正な審査を行った。その結果,2名とも審査委員全員が同じ評価であった。このため,2名を奨励賞に決定した。
第14回奨励賞受賞理由
ミュージアムパーク茨城県自然博物館 伊藤彩乃氏
伊藤氏は,「植生史研究」をはじめ葉化石の形態学研究を推進しており,共著でEcological Research 誌に英文でレビュー論文を出版されたほか,過去にも国際誌2本で共著論文があるなど,ブナ林の植生史の解明に大きな貢献をした。博物館の業務をこなしつつ,地道に研究活動を継続し,着実に論文を発表し続けており,将来の植生史研究の発展に貢献することができる人材である。将来は,フィールドや対象とする時代をさらに広げ,植生史分野の多様な展開を期待したい。以上のことから,植生史学の発展に将来貢献できる有望若手会員として日本植生史
学会奨励賞に決定した。
公益財団法人鹿児島県文化振興財団・埋蔵文化財調査センター 真邉 彩氏
真邉氏は,土器圧痕の種実,昆虫,敷物と多様な素材を用いて,考古学的な視点から植物利用に関する未開拓な分野の成果を上げている。そうした成果から論文賞も受賞しており,奨励賞受賞に相応しい業績を有している。また,埋蔵文化財行政職での勤務の傍ら,本学会の行事委員や鹿児島大会実行委員を歴任する等,植生史研究を推進する研究姿勢は,奨励賞受賞に相応しい。さらに,国立歴史民俗博物館での共同研究や,九州を中心とした考古学関連学会で発表するなど,意欲的な発表活動は行政の中にいても幅広い学際研究ができることを示す。以上の
ことから,植生史学の発展に将来貢献できる有望若手会員として日本植生史学会奨励賞に決定した。