【24巻1号】2016

植生史研究 第24巻第1号(2016年3月発行)

[巻頭写真]
奥羽山脈秋田駒ヶ岳地域の偽高山帯景観と湯森山の露頭でみられる完新世テフラ
池田重人・佐瀬 隆・細野 衛・高橋利彦

[原著]
完新世露頭試料の花粉組成と植物珪酸体組成から推定した奥羽山脈湯森山における偽高山帯の植生史
池田重人・佐瀬 隆・細野 衛・高橋利彦, p3-17

山頂尾根部がササや低木で覆われ偽高山帯の景観を呈している秋田駒ヶ岳山域の湯森山において,花粉分析および植物珪酸体分析により偽高山帯を構成する植生の変遷史を明らかにした。分析試料を採取した露頭では,秋田駒ヶ岳火山の活動で降下堆積した多数の完新世テフラに挟まれるようにして,薄い土壌層が何枚も認められる。噴出年代既知のこれらのテフラを時間指標として,土壌層中の花粉と植物珪酸体の組成を明らかにすることにより,時代ごとの周辺植生を復元した。約9000 年前から約7600 年前までは植被に乏しく,火山荒原のような景観であった。その後,ササを含むイネ科等の草本が定着しはじめ,約7200 年前以降は露頭付近で湿性の草本植生が繁茂し,周辺ではミヤマハンノキが生育するようになった。後氷期の気候変動に伴い積雪量が増加するにしたがって露頭付近のササは衰退し,約5400 年前には消滅した。その後は,露頭付近でササの希薄な草本植生が継続し,約3600 年前になると周辺域でハイマツが勢力を広げた。約2200 年前からは露頭付近で再びササが生育するようになり,ササをともなう草本植生となった。約1800 年前以降になると草本植生は縮小し,ササが圧倒的に優勢でミヤマハンノキやハイマツなどの低木が混生する,現在みられるような偽高山帯の植生が形成された。

[解説]
石田糸絵・工藤雄一郎・百原 新:日本の遺跡出土大型植物遺体データベース

[雑録]
小林真生子・田代 崇:報告-第39回日本植生史学会談話会
橋詰 潤・鈴木英里香:報告-第40回日本植生史学会談話会