第11回奨励賞

第11回奨励賞

日本植生史学会表彰規程に則って,第11回論文賞審査委員会(能城修一委員長,小畑弘己委員,那須浩郎委員,西田治文委員,守田益宗委員)を設置し,審査を行った.その結果,審査委員会は第11回日本植生史学会奨励賞を,西内李佳氏,山本 華氏の2氏に決定した.

授賞理由(西内李佳氏):西内氏は,最終氷期の花粉化石群と大型植物遺体群を組み合わせて検討し,その成果を植物地理学および地理学的な視点から解析して,植物の空間分布を地形との関連で解明している。そして最終氷期の本州中部における落葉広葉樹林の分布や西日本の低標高域における亜高山帯針葉樹林の分布を気候変動との関連で高い解像度で明らかにしており,その成果は本学会以外の学会においても高く評価されている。また研究業績は国内だけでなく国際的にも発表を行っている。こうした点で,西内氏は植生史研究の今後の発展に大いに貢献すると期待され奨励賞に推薦する。

授賞理由(山本 華氏):山本氏は,縄文時代の土器圧痕を高い精度で同定するとともに,炭化種実や炭化木材の組成,あるいは出土遺物と組み合わせて,これまで未解明であった台地上の植物資源利用を総合的に解明している。こうした総合的な研究方法は,集落研究において新たな視点を提供するものであり,今後の研究のモデルとしての役割も持つものである。また未調査の土器圧痕の数は膨大であり,今後の精力的な研究により,特定の植物の栽培化など農耕の歴史にも迫ることができるものと期待される。こうした点で,山本氏は植生史研究の今後の発展に大いに貢献すると期待され奨励賞に推薦する。