第2回学会賞

日本植生史学会表彰規定(2002年11月17日制定、2004年11月28日改訂)に則って、学会賞審査委員会(鈴木三男委員長、能城修一・西田治文・南木睦彦・守田益宗各委員)を設置し、審査を行なった。その結果、第2回学会賞は以下の1名の会員に決定した。

受賞者
辻 誠一郎

推薦理由
(日本植生史学会奨励賞審査委員会委員長 鈴木三男)

辻誠一郎氏は日本大学文理学部の学部生時に花粉分析による植生復元の研究分野に入って以来、大阪市立大学、国立歴史民俗博物館、そして現在の職場に至るまで30年以上にわたり、自らは花粉分析の手法を中心としながらも、地質層序学、地形・地理学、堆積学、そして花粉のみならず大型植物遺体、材化石、珪藻分析などの諸分野に深く関わり、植生史と環境変遷史の第一人者として研究を続けてこられた。
この間の彼の研究活動はめざましいものがあり、幾多の学術論文の他、『考古学と植物学』(同成社、2000年)を企画し、自らも分担執筆しながら全体の編集を行うなど、多数の著書の執筆、編集、出版に関わって、この分野の啓蒙、普及、教育活動を先頭に立って実践してきており、その業績は非常に大きいものがある。辻氏は植生復元から植生史、更に拡げて環境史としてこれらの研究を展開するにあたり、共同研究者と一緒になって実際の遺跡現場で討論し、サンプリングし、分析を行い、その結果について現場を目の前にして議論しあうことにより、単に異分野の研究者の寄せ集めでない、本当の意味の総合研究を指導、実践してきたことも特筆に値する。
これらの研究業績と共に辻氏のもう一つの大きな業績に、学会活動への貢献がある。氏は日本第四紀学会の中心的会員の一人として評議員、幹事等の役職を通してその活動に大きく貢献してきているが、それよりも本学会における氏の貢献度は特段のものである。氏は本学会の前身である「植生史研究会」が1986年2月に発足するにあたり、その組織化の中心となって尽力し、研究会の代表としては会の運営に携わったばかりでなく、同年8月の「植生史研究」第1号の発刊以来、長らく編集委員長を努めてきた。そして1996年の日本植生史学会への発展は、正に氏の獅子奮迅の働きがあってなったものと言って過言ではない。以来、研究会時代に増して事務局長、編集委員長、会長を歴任され、ますます本学会の発展に尽くされてきた。
以上紹介したように、辻氏の研究、教育の業績と、植生史学および日本植生史学会の発展への貢献は極めて大きく、ここに第2回日本植生史学会学会賞を贈り、その業績を顕彰するものである。